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結婚の女神の愛と葛藤の日々






しあわせの風景







ああ、またか──ため息を一つ、零した。

侍女が言うには今度は人間の少女らしい。

長い黒髪が綺麗だとか、青い瞳は海のようだとか、散々褒めておいて最後に「それでもヘラ様には敵いますまい!」と憤るところがなんとも可笑しい。

彼の浮気の相手の情報なんて正直どうでもいいし、また面倒くさい事になったと思うだけだった。

いい加減、うんざりする。

ため息を一つ零すと、侍女が「ヘラ様の嘆き、悲しみは最もです!さぁ、制裁致しましょう!」と益々熱を帯びて言うのだった。

「では仕度をするわ──」

そう言って私は支度部屋へと向かった。

疲れた。

私は少し考えをやめて眠りたかった。

支度部屋には入らず寝室へ向かい寝台に体を乗せるとヒュプノス(眠り)がやってきてフゥーと軽く息を吹いた──













「ヘラ!ヘラ!良かった無事だったのね!」

私たち兄妹が父・クロノスのお腹から出てきたとき、母・レアは私を抱きしめた。

何度も私の名前を呼び、一緒に助かった他の兄妹を見向きもせずずっと私を抱きしめていた。

自覚していた。母にとって私以外の兄妹は興味がないことを。

それは私の容姿によるものであることを。

私と母・レアは髪の色以外は本当に瓜二つだったのだから──



それからしばらくして兄妹を救い出した末の弟、ゼウスが全世界の王になることが決まった。

少し揉めるには揉めたが、母レアの意見には誰も逆らえない。

それ以上にゼウスにカリスマ性があったのも事実だった。

その頃私は"彼"について行こうと密かに心に決めていた。

たとえ"彼"が私に気がなくても私は彼の事が好きだから傍にいるだけでいいと思っていた。

いよいよ、彼が冥府に旅立つ日、私は彼に着いて行きたいと告白した。

"彼・ハデス"はだまったまま、悲しそうな微笑みを浮かべ首を横に振った。

「たまには遊びに来るよ。ゼウスはいい顔しないだろうけどね。元気でいるんだよ、ヘラ。」

私は静かに否定され、彼を見送ることしかできなかった。

悲しみに、私は泣き続けた。

そんな私に母は告げた。

「ヘラ、私の大好きなヘラ。さぁ、私のお告げを、あなたの運命を聞きなさい──」

伝えられたそれはまるで他人の人生のようで、私は何も考えず、それを受け入れた。



ゼウスとの祝宴は盛大なものになった。

神々は食べて飲み、歌い踊る、とにかくそれは盛大だった。

ゼウスとはそれまであまり話したことはなかった。

それでも皆が口々に絶賛するように彼には何か特別なものがあることはわかった。

ただそれが恋に発展する理由になるにはならなかった。

祝宴中、ゼウスは常に私に優しく微笑みかけて私の中に眠る女心を刺激する言葉を幾つも囁いた。

「姉さん──ヘラと契りを交わせて本当に嬉しいよ!」

世界の王のその微笑みは実に美しく、あどけなかった。

私は何もかも忘れられると思った。



ゼウスとの生活はそれは華やかで楽しくて女として皆が羨むものだった。

全能神の妻として私は「契り・女としての生き方・子を成す事」を司事とすることになった。

女としてこれ以上栄誉はないと思う。

ゼウスとの間に子も成し、慎ましい幸せを感じていた。

このまま、私はこの道を歩いていけば何もかもうまくいく──そう思っていた時に侍女たちの噂話を耳にした。

「最近、冥府の王が大地によくお出かけになってるらしいのよ。いよいよ冥府の王は大地の女神を迎えられるのかしら。そうなるとこの世はっどうなってしまうのかしらね。」

心臓に稲妻が落ちたのかと思ったぐらい衝撃は図りないものだった。

自分の気持ちを嘘で塗り固めた何かが瞬間にして剥がれ、流出することを止めることが出来なかった。



彼──冥府の王は昔から輝ける妹・デメテルの事が好きだったのは知っていた。

だけど、冥府に就いてからは二人の間に恋や愛が芽生える事は許されない事になった。

だから、私は安心してぬるま湯のような幸せに浸っていたのに・・・

彼は今更、何のために大地を訪ねるのだろう。

その理由は十分にわかっていたけれど、それ以上考える事は苦渋だった。



その頃から、ゼウスの様子が一変した。

私に愛の言葉を吹きかける事をしなくなったのだ。

正直、ほっとした。

自分の気持ちに気付いて尚、私はゼウスを受け入れることはできなくなってしまった。

そしてゼウスは浮気をするようになった。

もう、どうでもよかった。



「ヘラ!これはどういうことです!」

母が怒号した。

「ヘラ!夫の浮気は災いの元です。あなたは悔しくないのですか?女として、母として、プライドはないのですか?」

空には暗雲が立ち込め、地上は嵐が吹き荒れた。

それでも私は何とも思わなかった。

「ヘラ、とにかく、あなたの役目を果たしなさい!さもないと・・・いいですね!」

頷くしかなかった。

私はすぐにゼウスを探し出し、迎えに行った。彼は人間の女性と最中だった。

事が終わるのを待って『帰りましょうか』と言うとゼウスは無言のまま蒼ざめた顔をさせた。

そんな事が何度も続いた。無言で帰る私達を見て皆が「ゼウス様はヘラ様に浮気を見つけられて怒られておる、全知全能神形無しじゃ・・・ヘラ様の嫉妬はすごいのぉ」と噂していた。たとえ事実と反していても、そう見せる事が重要だった。



そうして向かえたのがあの日だった。

その頃では浮気してるゼウスを自ら探さなくても私を気遣って色んな人が情報を伝えてくれていた。

「ヘラ様~。ゼウス様ったら悪い癖がまた・・・。一緒にお供しますわ・・・。」

侍女と一緒にその浮気現場へと向かった。

そして、私は知ったのだ、ゼウスがデメテルと寝たことを。

私はこれほど気分をよくしたことはなかった。

ゼウスがデメテルを寝取った!しかもお子まで宿しているのをしっかりと感じる。

もうこれで彼の、冥府の王がデメテルを選ぶことも選ばれることもできなくなったのだ。

笑い出したい気分だった。

ゼウスを連れて帰ろうと寝屋に行くとゼウスはとっくに身支度を済ませていたがデメテルはシーツに包まったまま私を見て即座に体制を立てた。

「ヘラお姉さま・・・ごめんなさい・・・私、私・・・」

「済んだことよ・・・もういいわ・・・」

そう優しく言うとデメテルはポトポトと涙を零した。

「ゆっくり休みなさい・・・あなたにはお子がいるのだから・・・。」

瞬間、デメテルは顔を上げ絶望を知った。

「じゃあ、帰るわ・・・」

ゼウスを促して宮殿の外へ出た。

私はひどい女かもしれない、デメテルの、妹の不幸を喜んでいる。

表面では寝取られた悲しい妻を演じて・・・

それでも溢れ出る喜びは大きく、つい顔に笑みを浮かべた。

その時、ゼウスが言った一言ですぐにその笑みは凍りついた。

「・・・これでよかった?オレは役にたてた?」

一瞬何を言ってるのか分からなかった。

そして、ゼウスの笑みをみて確信した。

ゼウスは私のこの恋を知っている。

知っていて、デメテルを・・・

言葉が出なかった。

ゼウスはすこし切なげな顔をして私を通り過ぎそのまま行った。

私は動けなかった。





私の成就しなかった恋。

私の夫になったゼウス。

私が好きだった人。

私が羨ましく思う彼女。

そして、新しい命。

モイライ(運命)ははじめからここにたどり着くことを知っていたのだろうか。

私には答えが分からなかった。

















眠りから醒めるとそこにゼウスがいた。

その顔はやっぱり少し切なげだった。

「迎えに来てくれるのが遅いから・・・オレが着ちゃったよ・・・」

そう言って私の髪を優しく手で梳いた。

瞬間、涙が溢れ出した。

涙と一緒に口から嗚咽を零した。

とっくにわかっていたことなのに。

この人は、私を愛してくれている事を。

結婚するあの日からこの人は私の事を──

ゼウスは私を胸に収め、私はその中で子供の様に泣いた。

あの日も、あの日も、あの日も、

どの日も戻る事はない、時間は進んでいるのに、私は前に進む事を拒み続けていた。

それでいて自分は安全なところで不幸だと思い込んでいた。

私はこんなに愛されているのに。

彼は今、幸せだろうか。

彼女は今、幸せだろうか。

ゼウスと私は、本当の幸せを見つけられるのだろうか。

「ゼウス、もう、もう浮気しないで。私、ちゃんとあなたのこと見るから。ちゃんと傍にいるから・・・」

泣きながら見上げるとゼウスはその切ない顔を優しい微笑みに変えた。

「うん、ヘラ。君がそう言うならオレは他の女なんて見ないでずっと一緒にいるよ。」

瞬間、私の彼への気持ちが蒸発するかのように優しく消えた。

そして心の中にゼウスの微笑みが残った。

私は初めて、ゼウスが好きだと思った。

世界は一瞬にして変わってしまった。







そして過去のため息の数と同じぐらい甘い吐息を出した頃、彼女の新しい命が大地に春を告げた。





 






私、個人的にギリシア神話のヘラさん、大好きなんです。

嫉妬しちゃうところなんてめっちゃかわいいじゃないですかっ。

ってゼウスが浮気しすぎなんだと思うんです。

だからヘラさんが怒るのはあたりまえだ!!!って叫びたい(笑)

ギリシア神話第一弾はヘラさんでした~ww



2009/10/10

 



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